2020年11月の記事一覧

リーディングスキルフォーラム ふくしま2020 が開催されました

2020年11月22日(日)にビッグパレットふくしま3階中会議室において、「リーディングスキルフォーラムふくしま2020」が開催されました。コロナ禍のため、会場座席数の3分の1が定員(105名)となったこともあり、告知わずか数日で予約が埋まり、急遽オンライン配信も実施することになりました。当日は、対面・オンライン合わせて230名以上の方が参加され、盛況のうちに開催することができました。

今年はコロナ禍により、当研究所が例年11月に開催していたリーディングスキルフォーラムの開催を断念せざるを得ませんでしたが、リーディングスキル向上を通じて学力や人間力の向上を目指す、 rst-laboふくしま(通称:F-labo)の皆さんが中心となって、リーディングスキルフォーラムふくしま2020を開催してくださいました。

第一部では、まず、研究開発の現場からの報告として、当研究所主席研究員の菅原真悟より「読解力を鍛えるには~RSTで自分の読み方を見直す~」と題して、リーディングスキルテストがどのようなテストなのか、またリーディングスキルテストと学力の関係についての報告を行いました。そのうえで、リーディングスキルの観点で読解力を鍛えることの大切さについて解説がありました。

次に、RSTの導入事例として、「相馬市が目指す教育行政~方向性の絞り込み~」と題して相馬市教育委員会教育長の 福地憲司 氏より、相馬市内の全学校にリーディングスキルテストを導入した経緯についての報告がありました。

相馬市では、これまで読解力を測る客観的なデータがなかったので、RSTを導入することで評価の指標として使いたいと考えたそうです。また、児童生徒だけではなく教員もRSTを受検することによって、RSTについての理解を深め、読解力向上に向けた取り組みを進めていくとのことです。

子どもたちに「瞬間学力」ではなく、これからの人生を「生き抜く力」を育成するための取り組みの中心に、RSTを位置付けていただいています。

 

第二部では、実践報告として、最初に福島県立安積黎明高等学校教諭 今野充宏 氏の山川出版社の『詳細日本史B』を用いた模擬授業の実演が行われました。

授業では、教科書をもとに、どのように授業を行っているのか模擬授業が実施されました。教科書を読みながら生徒に質問を投げかけ続けることで、主語、述語、目的語を生徒に意識させつつ日本史の内容を学ぶ授業となっています。「係り受け解析」「照応解決」「推論」を意識した授業内容となっていて、太字のキーワードを覚えるのではなく、教科書全体を通して日本史を構造的に学ぶように設計されています。授業の際、40人学級の場合、最低でも1回の授業で2回は質問を当てることを心がけているそうです。

次に、授業実践事例紹介として、いわき市立湯本第一小学校教諭の 徳永一夢 氏より、小学校での授業実践報告がありました。徳永氏は小学校4年生の担任ということもあり、受け持つ子どもたちがRSTを受検できませんが(RSTは6年生以上を対象に設計しているため)、リーディングスキルの観点で読解力育成を念頭に授業を行っており、国語、社会、算数、日常の実践(視写)での取り組みが紹介されました。

国語科の「漢字の広場」の単元では、RSTを知ったことでこの単元あらためて見直すことができ、「書くこと」によって語順や文の構造への意識を高める授業実践につながったこと、算数科の業者テストをRSTの6分野7項目で分類すると、あてはまることがほとんどで、そこから授業を組み立てられることなどの報告がありました。

読解力の育成には、教員自信がまず教科書を読み、教科書に出てくる言葉にこだわり(「ひっかかり」)、子どもたち学びを阻害する言葉に気づくことが大切であると述べられていました。

最後に、東京学芸大学准教授の 犬塚美輪 氏より「読むことに関する3つの誤解-読むことをどう教えるか-」と題した講演がありました。

講演で犬塚氏は、読解力育成に関するよくある3つの誤解として、

1.辞書・教科書を読めば語彙・知識が獲得できる

2.読解力を高めるためには特別な授業が必要だ

3.グループ学習で言語力が高められる

と言われることがあるが、けっしてそう単純ではないことが具体的な例を提示しながら解説していただきました。そのうえで、読解力の育成には、

・理解には内包と外延の両方が重要

・日々の授業の中で「どう読むかを」明示的に指導する

・児童生徒の良い説明を引き出す

といった3つの観点が重要であるとまとめられました。

 

なお、当日のフォーラムでは、当研究所所長の新井紀子もzoomでサプライズ参加いたしました。新井からは、子どもたちの読解力育成のために、まず教員がRSTを受検して読解力について理解しようする自治体が増えていることを紹介しました。そして、子どもたちが自学自習できる力を身につけ一人で歩いていけるために、読解力を育成する教育が今まさに求められていることをお伝えしました。


写真 講演の様子(東京学芸大学 犬塚美輪 氏)

0