2020年1月の記事一覧

板橋区学びのエリア「板橋のiカリキュラム開発重点校」研究授業が実施されました。

東京都板橋区では、令和元年から全区立小中学校で、すべての小学6年生から中学3年生、加えて教員もリーディングスキルテストを受検し、9年一貫の「読み解く力」の育成を通じて、学力向上・教員の指導力向上に取り組んでいます。特に、多様なバックグラウンドを持つ生徒が近年増加傾向にあることから、「言えばわかる」「読めばわかる」「やればできる」という前提を一度外し、リーディングスキルテストの6分野7項目の観点を意識的に授業に取り入れながら、生徒が確実に活用可能な形で知識やスキルを身に着けられるようなカリキュラムや授業案の開発を行っています。

今日は、板橋第六小学校で、小学1年生の算数、小学3年生の理科、小学4年生の理科、小学5年生の社会科で、「読み解く力」を育成する研究授業が行われました。

小学4年生の理科では、高橋三紀也教諭による「物のあたたまり方」(全10時間)のうち、7時間目にあたる、ビーカーに入っている水をアルコールランプで温めたときの水の動きについて、実験を通して調べたこと(6時間目)を図や言葉を使ってまとめる活動が行われました。

前回の授業では、「サーモイクラ」(サーモインクで色付けをした人工イクラ)を用いて、水を温めたときに起こる対流の様子を実験で確認しました。その実験のビデオをタブレットで再生しながら、その変化を4つの特徴的な箇所を選んで、児童に文章と図で説明させます。児童は班で議論しながらも、各自自分のノートにまとめていきます。サーモイクラの色の変化(ブルーからピンクへ)とその分布、動き(上下運動から全体的に回る様子)、に注目ができているか、注目したことを正確に言語化できるか等が評価のポイントになります。

図1:児童の書いた実験の図・説明の例

 

4行以内にサーモイクラの色の変化と動きを的確にまとめようとすると、「なりながら」「~したら」「~したり、~したりした」「全体的に」「時計回りに」などの言葉を使う必要に迫られます。「見たことを短文で正確に表現する」ことは、自由に表現することと並んで、学びを豊かにする上での大切な活動です。図にする際には、矢印を使うことが推奨されました。この箇所を高橋教諭はRSの「イメージ同定」の活動として位置付けていました。

最後に、実験でわかった「水の温まり方」を教科書のまとめを参考にして、一文にまとめる、という活動が行われました。

教科書には次のように書いてあります。

  • あたためられた水は、上に動きます。
  • 水は、動きながら全体があたたまっていきます。

この二文を、意味を変えずに一文にまとめる活動が行われました。この活動を高橋教諭は「同義文判定」として位置づけました。二文を一文にまとめるには、主語を揃える必要があります。そこで、児童は、二文に共通する「水」を主語として、たとえば、次のようにまとめていきました。

  • 水は、あたためられると上に動き、やがて動きながら全体があたたまっていきます。

理科の実験や観察では、時系列で起こることを的確に表現することが重要です。「はじめに」「じょじょに」「次に」「やがて」「さいごは」などの言葉を使いながら、ほとんどの児童が自力でまとめることができました。

 

板橋第六小学校では、普段から、週に一回、朝の時間に全校生徒が三分間「視写」(見ながら写す)に取り組んでいるそうです。視写そのものが目的ではありません。授業中に字や文を書くことへの抵抗感が減るように、との配慮から始まった取り組みです。その結果、板橋第六小学校の四年生では、マス内に字を書けない生徒や筆圧が足りない生徒はほとんどいません。授業中は、「見た通りに表現をする」ことに全員が集中しており、次々に個性豊かな表現が生まれていたことが印象的でした。

 図2:別の児童が書いた実験の図・説明

 

 

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板橋区学びのエリア「板橋のiカリキュラム開発重点校」研究授業が実施されました。

東京都板橋区では、令和元年から全区立小中学校で、すべての小学6年生から中学3年生、加えて教員もリーディングスキルテストを受検し、9年一貫の「読み解く力」の育成を通じて、学力向上・教員の指導力向上に取り組んでいます。特に、多様なバックグラウンドを持つ生徒が近年増加傾向にあることから、「言えばわかる」「読めばわかる」「やればできる」という前提を一度外し、リーディングスキルテストの6分野7項目の観点を意識的に授業に取り入れながら、生徒が確実に活用可能な形で知識やスキルを身に着けられるようなカリキュラムや授業案の開発を行っています。

今日は、板橋第六小学校で、小学1年生の算数、小学3年生の理科、小学4年生の理科、小学5年生の社会科で、「読み解く力」を育成する研究授業が行われました。

小学校1年生の算数では、飯田泉教諭による「ずをつかってかんがえよう」の授業がありました。小学1年生では、「1つ、2人」のような基数以外にも「3番目、5回目」のように順序数としての数を学びます。日常生活の中で、よく使う概念にもかかわらず、算数では非常につまずきやすい箇所として知られています。本単元の目標は「順序数や異種の数量を含む加減の場面、求大や求小の場面についても加減計算が適用できることを理解し、それを用いることができる」ことです。今回は全体で6時間の授業のうちの5時間目の授業が研究授業として公開されました。

飯田教諭は、次の2つの文章が同じ意味か、生徒一人一人に問いかけました。「同義文判定」の活動として位置づけたそうです。

多くの学校では、この文章題を深く読み解く前に、おはじきや図を使って、直感的に違いを理解するように促します。しかし、今回の授業では、「4ばんめ」と「まえに4人」という言葉の違いを意識させて、同義か異義かを一度判断させた上で、図をかかせる活動に入りました。図を使って考えた上で、改めて2つの文章が同義か異義かを確認しました。

これについて、飯田教諭は、「おはじきを使う、このような順で図を書こう、という段階を踏むと、授業中はわかった気持ちになる児童が多い。けれども、一人で問題に向き合わせると、どちらの問題にも4+3=7と答えてしまう児童が少なくない。言葉の違いをしっかりととらえた上で、図を書くという手続きを踏むことで、単元の目標である『図をつかって考える』が達成できるように工夫した」と語っていました。

そもそも文章題の文章が読み解けないことから算数につまずく児童が少なくありません。こうした小さな努力の積み重ねで、文章題の文を正確に読み解き、正しく図に変換し(イメージ同定)、そこからスムーズに解くことができると良いですね。1年生からの「読み解く」トレーニングの重要さを実感した授業でした。

 

板橋第六小学校では、週に一回、全校で朝の時間に3分間の視写の時間を取り入れています。各学年で、3分間で正確に写すことができる文字数の目標があり、ノートに書いて提出したものを担任の先生がチェックしています。小学1年生では、①鉛筆を正しくもつ、②筆圧をかけて書く、③字の形を正確に写す、④マスの中におさまるように書く、など、鉛筆とノートを使って、文章を書く上での基本を身に着けていきます。鏡文字を書いたり、促音や拗音でつまずく1年生は少なくありません。日常的に視写をし、訂正することで、2年生への進級がスムーズになることを期待します。

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研究授業が開催されました(板橋区立板橋第六小学校)

1月22日(水)に板橋区立板橋第六小学校において、学びのエリア「板橋iカリキュラム開発重点校」研究授業が開催され、当研究所代表理事・所長の新井紀子が助言・指導を行いました。

 学びのエリア「板橋iカリキュラム開発重点校」研究授業は、今年度すでに3回開催され、今回が4回目となります。

 今回の研究授業は、下記の4つの教科・単元で行われました。

 1年算数「ずをつかってかんがえよう」

3年理科「じしゃくにつけよう」

4年理科「物のあたたまりかた」

5年社会「社会を変える情報」

 
授業後の研究分科会では、授業者自評・研究協議・指導講評が行われました。

新井は4年理科の講評を行い、それ以外の研究授業については、板橋区「読み解く力」開発推進委員の先生方が指導・助言を行いました。


そのあと、体育館に移動し研究全体会が開催されました。全体会では、板橋第六小学校での取り組みや各分科会からの報告の後、新井から全体講評を行いました。

新井からは、授業についての講評のほかに、読み解く力を育成する授業はリーディングスキルテストの点数を高めるためにやるのではなく、授業・単元にはそれぞれ達成すべき目的があり、そこがないがしろになってしまうのは本末転倒であると助言がありました。

 

今回の研究授業にはおよそ200名が参加しました。区内の先生方だけでなく、国立教育政策研究所や他県の教育委員会からも参加があり、リーディングスキルに関する関心の広がりが感じられました。(RST事務局)

 

 

 

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