タグ:RST

大学初年次教育での取り組み

毎年1年生全員がRSTを受検する都内のとある社会科学系学部があります。

担当のI教授にRST継続の理由やその活用方法をお尋ねしたのでご紹介します。

I教授はその大学の必修の初年次教育の講義を担当されています。人数は毎年250名程度です。その講義の一回目でRSTを全員が受検するそうです。受検し終えたら「評価(フィードバック)を必ずスマホで撮影する」ことを義務づけています。スマホの画面を見ながら、各自、自分の読解のどこに課題があるかを把握するのが一回目の講義の目標です。

その後も、「フィードバックの内容を踏まえながら」日経新聞の記事を読むことを課題として課し続け、読解力を上げることで大学の講義やゼミについていけるようになろう、資格試験に合格できるようになろう、と目標を掲げてトレーニングを奨励しつづけるとのことです。

そして、最後の講義でもう一度学生たちはRSTを受検します。成績に加味されるということもあり、真剣に受検するそうです。「二度目の受検結果は、一度目より有意によくなっています」とのこと。

「RSTを受検できてよかった」という学生のコメントが多いので、毎年受検を続けている、というのも興味深い点です。RSTは45分、相当に集中して解かなければならないので、小中学生だけでなく大学生や大人の中にも「疲れる」との感想を漏らす受検者は少なくありません。ですが、「自分の読解力を診断してもらえる機会は他にないので、受検してよかった」「どうして伸び悩んでいたのかわかった気がする」というような感想が学生から多く聞かれるというのは嬉しい驚きでした。

大学でもRSTを通じて、学生の読解力向上に取り組んでいるという事例としてご紹介しました。大学生や大人のRS向上に悩んでいる機関や会社のご参考になれば嬉しいです。

0

読解力の向上に役立つ『RSノート』の取り組み(燕市)

燕市はRSTを2021年度に導入し、市内の小学6年生から中学3年生までRSTを受検しています。読解力に対する先生方の興味関心も高く、自発的にRSTを受検する先生が多い市です。2023年度の全国学テでは、中学校が大きく成績を伸ばしました。

昨年は(コロナ禍のため)オンラインで現地の算数の授業を拝見し、コメントをさせていただきました。今年度は、まずRSTノートを導入した学校を視察しました。その後で、RSノートと授業を両輪で回していくことが、子どもたちの読解力向上、学力向上、そして先生方の授業への自信や働き方改革につながるという道筋について、先生方に具体的にお話しさせていただきました。(講演の内容は、尾花沢市とほぼ同じです。)

市内で「RSノート」への取り組みをまず進めてくださったのは吉田中学校でした。

中学校は教科担任制です。自分は専門ではない科目のRSノートを見るには、中学校の先生にとって心理的ハードルが高いことと思います。にもかかわらず、取り組みを引受けてくださった吉田中学校の先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。

燕市では、もともと自学ノートを作ることには積極的でした。また、毎日の時間割に「長善タイム」が設けられ、学校で自習をする習慣があります。その中でRSノートに取り組む時間を捻出しています。私が視察した木曜日は「イメージ同定」の日、だそうで、どの学年も社会科や理科の指定されたページの指定された資料から言えることをノートに書き出していました。子どもたちはすぐに慣れるもので、RSノートに取り組み始めてまだ2ヶ月経っていないのに、「今日はイメージ同定ですか」とか「具体例同定やってもいいですか」などとRSTの用語を使いこなしているようです。

燕市のように学校でRSノートに取り組む時間を10分でも取れるところは、その間、先生にはぜひ「机間巡視」をしていただきたいです。10分間は短いですので、30秒で日付や指定された教科書の箇所をノートに書き、1分で指定された教科書の箇所を開けるようにしたいですね。子どもたちがさっと始めるように、良い前向きな声掛けをして心を配りたいところです。残りは8分30秒。ポストイットと赤ペンを持って机間巡視をしましょう。

このとき、専門外の教科について正しく指導しなければ、と思うと気が重くなりますが、ポイントを押さえれば、誰でも上手にコメントすることができます。イメージ同定の代表例である「(社会科の)グラフ」の読み取りでは、次のようなことに注意すると上手に特徴を読み取ることができます。

  1. グラフのタイトルを上手に使う。グラフのタイトルが「日本の工業生産にしめる中小工場と大工場の割合」ならば、「日本の工業生産」「中小工場」「大工場」「しめる割合」という言葉を使うと的確な文が書けます。
  2. 縦軸、横軸が何かを意識する。横軸が年、縦軸が生産量(単位はトン)など。
  3. 大きく増えているものに注目し、主語を正しく選びながら、1の「グラフのタイトル」を使って文にする。
  4. 大きく減っているものに注目し、主語を正しく選びながら、1の「グラフのタイトル」を使って文にする。
  5. 量が増えているのか、割合が増えているのか区別する。

このポイントを意識しながら、机間巡視をしつつ声掛けをしましょう。3と4の「増えている・減っている」が書けるようになったら、「どのように増えた(減った)」がわかるように、的確に言葉を補えるようにしたいですね。

「増えた」→「急激に増えた」と書けるようになったら、「急激に」のところに赤丸をし、「『急激に』って書けたね。かっこいいね。すごくいいと思うよ」と励ましましょう。

「急激に増えた」→「1960年代から1990年代にかけて急激に増加した」と書けるようになったら、「「1960年代から1990年代にかけて」や「増加した」が書けたね。すごくわかりやすくなったね」とほめて、赤丸をつけましょう。また、声に出してほめ、クラス全体でも「的確な表現をすることが良いこと」だと、評価の視点が共有されるようにするとよいでしょう。用語の誤り等に気付いたら、ポストイットを貼り、「もう一度考えてごらん」「教科書をよく見比べてごらん」と声掛けしましょう。

このように机間巡視をすると、「増えた・減ったはわかっても、割合なのか総量なのかがわかっていない」「用語が定着していない」など子どもたちの課題が見えてきます。それを授業に活かすと、クラス全体の底上げにもつながります。

燕市での講演会には、はるばる泉大津市から視察の先生方がお越しになりました。泉大津市の指導主事に、燕市の指導主事が「RSTは一校ではなく、全校で取組んだほうがいいです。そうでないと、教員は自信をもって読解力に取り組めません。本当はどの学校に異動しても読解力に取り組み続けられるように、新潟県全体、いや日本全部で導入してほしいです」と力説する姿を見て、胸が熱くなりました。

燕市の先生方、本当に有難うございました。

※写真は、具体例同定に取り組んだ生徒のノートから。本人の許可を得て掲載しています。

 

 

0

RSノートと連動した授業案について(尾花沢市)

尾花沢市は今年度から小学5年生から中学生まで、RSTを導入した自治体です。私は、普段から尾花沢市(および山形県)を「読解」の材料としてよく使います。

  1. 山形は盆地が多く、夏は暑い。
  2. 山形は盆地が多く、スイカの名産地である。
  3. 山形は盆地が多く、花笠まつりで有名だ。

「多く」は「多い」の連用形です。「多く」で止める用法を連用中止といいますが、この3つの文の「多く」は、形は同じでも、使う意図がちがいますね。1は「原因や理由を表す」ための連用中止です。3は単に2つの文を並列させています。2はどちらかはっきりしませんが、実は、盆地は朝晩の気温差が大きく、スイカの生育に適しているそうです。(山形県ホームページより)

社会科では、連用中止が多用され、それが、1の使い方なのか、3の使い方なのかを読み分けられるか否かは、社会科の教科書をひとつのまとまった知識として読めるか、それとも羅列に見えてしまうかを大きく左右します。そのような読み方指導を社会科でしているでしょうか。

そんな問いかけから、尾花沢市での講演会は始まりました。

今回の講演会は、尾花沢市教育委員会側からのご希望もあり、「RSノートと授業との関連」を中心にお話ししました。

現在、多くの自治体で「自学ノート」や「自習ノート」の取り組みが広がっています。小学校低学年や中学年は、ドリルや漢字の書き取りなど、指定した宿題をさせることが多いようですが、高学年になると学力差がつき、定型的な宿題をさせることが難しく、「自分でしたいことをやってきましょう」と自主性に任せる自治体が少なくありません。中には、素晴らしい自由研究をする子もいますが、多くの子は、「何をやっていいかわからない」状態に陥ります。

そこで提案したいのが、「RSノート」です。

RSTを受検すると、6つの分野での受検者の結果に合わせた学習アドバイス(フィードバック)が表示されます。この学習アドバイスに従って1年間頑張ってみると、それぞれの分野の苦手な部分が改善し、不安なく授業に参加できたり、自信をもって手を挙げたり、自学自習できるようになります。

一方で、クラス全員の自学ノートをチェックする時間が取れないとか、授業とどのように関連させればよいか、というお悩みも聞きます。

そこで、今回は、具体例同定とイメージ同定の2つの分野について、自学ノートと普段の授業をどのように連携させるとよいかについてお話しをしました。

まず、RSTでDやEの評価がついている児童・生徒(約1/3)は、実は、(算数・理科・社会・英語では)およそ「見開き2ページずつ授業が進む」ということを理解していないことが往々にしてあります。DやEの評価のついた児童生徒に、「今週、社会科はどこまで進みましたか?」と聞いてみてください。答えられない子が大変多いことでしょう。こうしたクラスでは、先生が教科書を使わずに授業を進めていることが多く、中高生の場合、定期試験対策も先生が配布したプリントを中心に行うことが多いようです。

まず、教科書を開く、というところから、授業改善を始めてください。

また、読解力下位の児童生徒では、見開き2ページの情報から、特定の単語を見つけるという視覚による情報検索の力が不十分な子が少なくありません。授業の冒頭で、今日の授業のキーワードになる言葉を、見開き2ページから見つけ出すゲーム(私は「ウォーリーを探せ」と呼んでいます)を30秒してみてください。たとえば、東京書籍の「地理A」p88~89の見開き2ページから「ヒンドゥー教徒を見つけましょう」という課題をします。本文には1カ所出てきますが、それ以外に、資料に2か所出てきます。最初は全員が本文中に見つけることを目指し、最終的には、資料や欄外註も含めて見つけられるようトレーニングをするとよいでしょう。教科書のレイアウトに慣れ、キーワードが目に飛び込んでくるようにすると、授業で問いかけたときの反応がよくなります。また授業の冒頭でゲーム感覚でトレーニングすることで、集中力も高まることが期待できます。そして、当然、今日はこの見開き2ページを学ぶのだな、という心構えができます。

学力テストの結果とRSTを見比べると、特にイメージ同定や具体例同定の能力値が高い児童生徒は学テの結果が良いという傾向が見られます。イメージ同定は、テキスト部分(本文)と資料を突き合わせ、資料のどの部分が本文の根拠になっているかを読み解く力を測っているため、資料が多くテキスト分量も多い全国学テとの相関が高いのは自然なことでしょう。

RSTを受検すると、イメージ同定の分野について、非テキスト情報を読み解く際、「どんなことを日ごろ気をつけて学習すればよいか」のフィードバックが表示されます。それをノートに貼り、実践します。また、子どもたちに届いているフィードバックを教員が把握し、授業に活かします。

まずは、資料の読み方の基本を学年全体で共有し、「資料の特徴を挙げる」活動をグループでさせるときに、観点として共有しましょう。社会科の資料の読み方は、教科書に明記されています。ただし、一朝一夕で身に付くような簡単な内容ではありません。繰り返し実践して、初めて身に付きます。しかも、資料の読み解きは、学年進行で難しくなるので、中高の先生も油断はできません。たとえば、5年生では、算数で割合や%を学びますが、定着しないことで悪名高い単元です。RSTでも、比が出てくると正答率が一気に下がります。にもかかわらず、社会科では、当然のように資料に割合や%が頻出します。算数だけでは身に付かない比や割合の感覚を、社会科の資料の読み方を通じて身に付けるようにしたいものです。ですが、小学校高学年の社会科の授業で、RSが低い子が「肉が多い」のように発言した際、「〇〇に占める肉の量(割合)が最も多い」のように訂正を促す先生はほとんどいません。どの子にも発言させたいがゆえに、授業では訂正しづらくなってしまったいるのでしょう。

こんな風に工夫をしてみてはいかがでしょう。

資料の読み方の基本を箇条書きで紙に書き、資料を読む前には、それを黒板に貼りましょう。そして、その読み方に則って特徴を挙るように指導しましょう。東京書籍の5年生の社会科の教科書では、次のように資料を読むことを奨励しています。

  • 図表のタイトルを使って表現する。(例:「一人1日あたりの食べもののわりあいの変化」)
  • 縦軸と横軸の単位に気をつける。(例:万t(マントン)と読めるか。総量なのか割合なのか)
  • 減っているものや増えているものに注目する。
    • 減り方や増え方を適切に学習言語で補う。(例:1960年代に比べて倍増した、急増した)(ダメな例:めっちゃ増えた)
  • 多いもの、少ないものに注目する。
    • 「〇は×より多い」のように比較対象を明確にする。
    • どれだけ多いかを適切に学習言語で表現する。(例:中小工場の数は、大工場より多い。)
  • 表現しようとしている対象を正確にとらえる。
    • 割合なのか、総量なのかを明確にする。
    • 数なのか、生産量なのか、生産額なのかを明確にする。
  • 変化しないものにも注目する。

「気づいたことを挙げてみよう」「わかったことを話し合おう」というアクティブラーニングの授業は多いですが、吟味する観点を指定する授業は私の経験上は、残念ながら見た事がありません。資料を「どのような観点で」「どのように表現すればよいか」を学年で共有し、授業でも実践し、RSノートで確認することで、その学年のうちに確実に身に付けておきたい資料の読み取り方を習得できるようになります。

先生方にも「まずは1週間子どもの気持ちになってRSノートをつけてみてください」とお願いしています。どなたも、「やってみると意外に頭を使う」と仰います。先生自身の授業力向上にもきっと役立つはずです。

 

0

相馬市教育委員会で「RSノートづくり」の研修を行いました

教育のための科学研究所では、今年度からRST受検後に返されるフィードバックコメントが一新されたことを受け、リーディングスキルと学力を伸ばしていくための「RSノートづくり」を、受検した自治体や学校にご紹介しています。

今回は、6月28日(水)、第2回相馬市公立学校研究指導員会において、当研究所の上席研究員 目黒朋子 が「RSノートの活用方法 ~受検結果を個別最適な学びにつなげる~」と題し、「RSノートづくり」についての研修を行いました。

※「RSノートづくり」についてはこちらを参照

 その後、相馬市立桜丘小学校の加藤政記教頭より、「読むために書く活動の充実とRSノートへの挑戦 ~家庭学習という作業からの脱却~」と題したお話がありました。
桜丘小学校での教育は、一つひとつがRSを意識して行われており、授業はもちろんのこと、子どもたちのプリントやテストに対しても先生方は常にRSの視点でコメントを返しています。RSが文化として根付いている学校と言えるでしょう。
さらに、桜丘小学校では、家庭学習の「さくらっこ自学メニュー」をRSの視点で見なおし、RST受検後すぐに「RSノート」を実施できるよう準備を進めているとのことでした。

 

研修を受講した先生方からの感想は以下の通りです。

〇RSノートの演習を通して、相馬市が今年度重点としている家庭学習の「5分復習・1分予習」と「RSノート」を関連づけて実施できるのではないかと思った。

〇RSノートをまずやってみようと思った。その前に、フィードバックコメントをしっかり読み、子どもたちの実態を確認していきたい。「ちりも積もれば山となる」の気持ちでやっていきたい。

〇本校では、朝学習に「RSタイム」を設定し、家庭学習は「家庭学習の手引き」で示している。しかし、子どもたちは与えられるままに取り組んでいるだけで、自ら学ぶ意識や方法をもっていない。RSノートを用いて、RSTの受検結果を個別最適な学びにつなげることで、教師が提示しなくても自ら学ぶ子どもたちに育成できるのではないかと思った。他の教員の協力を得ながら自校化を図っていきたい。

〇教員が子どもたちの結果を把握するだけでなく、結果をどう生かすかについて、RSノート作成を通して、個への指導方法や視点を知ることができ、良かった。教科書の読み取り方は、今後も解像度高く行っていきたいと感じた。

〇RSTの結果を学校全体としての授業改善に生かすことはしてきたが、「個別最適な指導」には活用できていなかった。学校としてすぐに取り組んでいきたい。

〇目黒朋子先生のRSノートの取組についてのお話をうかがい、おもしろい取組だと思った。授業では、日々RSの視点で授業を行っているが、それだけでは足りず、家庭学習でもRS向上に向けて何か取り組めないかと思っていたので、ぜひやってみたいと思った。

〇RSノートの有効性が分かった。自校化していくために、予習・復習とどうつなげるのかを学校で話し合っていきたい。桜丘小学校のように、自学メニューとつなげていきたい。 

0

板橋区でRSTの結果の活用方法と「RSノート」の指導をおこないました

RSTでは、2023年度、評価とコメントを一新しました。(能力値の考え方は変わりません。)特に注目していただきたいのが「コメント」です。それぞれの受検者が「今日からどんなことに取り組めばよいか」が具体的に書かれています。

来年、再来年とリーディングスキルと学力を伸ばしていくための「RSノートづくり」を、受検した自治体や学校にご紹介しています。今回は板橋区の研究主任の皆さんを対象に、研修を行いました。

 RSTを受検すると、RSTの6つの項目に関するコメントが受検者にフィードバックされます。学校でも、その内容を把握することができます。このコメントを使って、受検した児童生徒がRSノートを作ります。

まず、最初の方のページにRSTの6つの項目に関するコメントを糊で貼ります。これが、診断に基づく「それぞれの児童生徒が取り組むとよいこと」です。1日に6つの項目をすべてやろうとしては大変です。月曜日は係り受け解析と照応解決、火曜日は同義文判定、のように曜日ごとに取り組むことを決めて5日で6項目を満遍なくやるのもよいでしょう。あるいは、まずは係り受け解析のコメントに全員で取り組み、それができるようになってからは、曜日ごとに1つずつする、というのでもよいでしょう。学校やクラスの実態に合わせながら、1年間をかけて、すべて「できるようになる」ことを目指します。

たとえば、係り受け解析(DEP)や照応解決(ANA)で課題があるときには、音読と視写に取り組みましょう、というコメントがつきます。どんなやり方で取り組むかは、診断結果によって変わります。ただし、かかる時間は5分程度です。

この日は、先生方に持参の教科書を使って、1週間分のRSノートを作ってもらいました。小学校では全教科を担任の先生が教えますが、中学以上はそうではありません。他の科目の教科書を視写してみて、「こんなに難しいの?」と驚かれる方が少なくありませんでした。RSノートを初めて体験してみての、率直な感想が交わされ、多くの質問がありました。

「(デジタル化が進んだ今でも)音読と視写ですか?」「中学生に音読ですか?」との質問がありました。

「今だからこそ」と私たちは考えています。

デジタル化が進んだことによって、家庭では本と新聞が消えました。また同じテレビ番組を家族で見ることも減りました。子どもたちが確実に手に入れることができる字が書いてある文書は、教科書だけ、という家庭も少なくありません。子どもたちが、説明文の書かれ方や読み方に慣れるためにも、各種の教科書を音読し、言葉や言い回しに慣れてほしいのです。その力が、先生が授業中にする説明を「耳で聞いて理解できる」ことにつながります。

また、小学校に比べて中学校の教科書は一気に抽象度が上がることが私たちの研究からわかっています。小学校の国語の教科書を音読できたからといって、中学校の地理の教科書もすらすら音読できるとは限りません。ぜひ、中学生にも高校生にも音読を勧めてください。

かつての学校のように、全員が同じ教科の同じ箇所を音読・視写するのではなく、それぞれの得意不得意に合わせて、様々な教科の教科書を音読・視写するとよいでしょう。社会科と理科、国語と算数・数学では、言葉も言い回しも違うからです。

「数学の教科書を音読して意味があるんですか?」との質問もありました。

音読させてみると、中学校や高校の数学の記号を正しく読めない生徒が少なくないことに気づくでしょう。数学の式を正しく読めないということは、先生が授業中に口頭でする説明を聞いても、頭の中で式につながっていない、ということになります。

「担当以外の科目をやってきたときに、どう指導してよいかわからない」との声もありました。

RSノートは、子どもたちが自己調整能力を身に付けるための自学自習用のノートです。指導しなくては、と身構えるのではなく、励ましてあげてください。惰性でやっている雰囲気が出たら「理科にも挑戦してみよう」「がんばってよく身に付いたね。次のコメントに進んでみよう」など、挑戦を促してください。質問があったら、「数学の先生に質問してみるといいよ!」と明るく送り出してあげてください。

「RSノートをチェックすることで、教員の多忙に拍車がかかるのでは?」とのご懸念もありました。

実は、教員の多忙の原因の大きな部分は、児童生徒が説明文を読み慣れていないことにまつわることが少なくありません。

昭和の時代であれば、「おたより」で持ち物を指定したり、行事の集合場所・集合時間を指定しておけば、ほとんどの子がそのように行動してくれました。「時間割」を渡したにもかかわらず「明日は何をもってくればいいですか」と真顔で聞くような生徒は、いなかったでしょう。高学年になれば多くの子がHBでノートを取れました。だからこそ、45人学級でも学級運営が成り立っていたともいえます。子どもたちを取り巻く環境が激変する中、徐々に、説明が伝わる子とそうでない子の差が開き、教員の多忙に拍車をかけた面があります。リーディングスキル向上に自治体と学校全体で取り組んでいるところでは、(1)中学生全員が50分の授業に集中し、ノートを書くことができている、(2)授業が成立するようになった、(3)「おたより」を読めるようになり、明日の準備ができる子が増えた、などの報告が相次いでいます。RSノートをすることで、それだけの改善が見込めるのであれば、試してみる価値はあるのではないでしょうか。

※音読と視写以外にはどんなコメントがついているかは、RSTを受検して結果をダウンロードしたときについてくる5段階評価コメント一覧のPDFをご覧ください。

 

 

 

0