「板橋の i(あい)カリキュラム」読み解く力 中間報告会が開催されました

東京都板橋区では読み解く力の育成を目指して、独自に「板橋 i(あい)カリキュラム」の開発を行っています。12月3日(木)には、板橋区立文化会館において「板橋の i(あい)カリキュラム」読み解く力 中間報告会が開催され、当研究所所長の新井紀子がパネルディスカッションのファシリテーターを務めました。

 
パネルディスカッションに先立って、板橋区教育委員会の中川修一教育長から、society5.0に向けて、板橋区では言葉の意味を理解して考えるといった人間ならではの優位性を10年間のカリキュラムの中で育成していきたいとお話がありました。


そして、今後の取組として、①板橋区がめざす「読み解く力」について理解する、②教科書で学ばせることをめざす、③6つのリーディングスキルの観点を最低1つは日々の授業に取り入れる、④児童生徒に自分の考えを書かせアウトプットする場面を入れる、⑤日常的な取組として継続していく、ことを行っていくと説明がありました。

 

 次に、板橋区教育委員会の水谷知由統括指導主事より、板橋区の取り組みについて解説がありました。

水谷統括指導主事は、読むことができていない子どもに「教科書を読めば分かる」と指導しても内容を理解できないので、「読んでも分からないかもしれない」と考えて指導するなど、指導観の更新が必要であることを強調されていました。

また、コロナ禍で学校が一斉休校のときに、児童生徒に学習プログラムの提供を行ったところ、一人では十分に学ぶことができず、保護者が付き添わなければならなかったケースもあり、自己学習力・自己決定力の重要性が改めて明らかになったそうです。
そして、授業革新の3つの原則として
①教科の目標の達成をめざす
②子どもたちに教科書を読み取らせる
③この言葉の意味を理解しているか?と疑問をもって授業をする
の3つを常に意識して、主たる教材は教科書であり、教員が教科書を研究して授業を行うことが重要であると述べられていました。

 

続いて、パネルディスカッションでは、板橋区立小学校の校長をはじめ、区内学校の研究主任2名、教員2名、板橋区教育委員会の指導主事1名が登壇し、子どもたちの「読み解く力」を育成するためには、どのような点に注意すべきかが議論されました。

登壇された先生方からは、「指導書から授業をつくるのではなく、一から教科書を読んで授業を作る」「子どもたちに、なぜ?どうして?と問いかける時間を大切にしている」「最後に教科書を開くだけ、という授業から脱却する」「教科書をよく読んで、子どもたちが躓きそうな箇所を調べておく」「指導観の変換は評価観を変えること」といった発言があり、教科書で教えるために普段どのような点を意識されているのかがよく分かりました。

ディスカッションの最後に、教育委員会指導主事からは、先生方が使いやすいと感じるカリキュラムの作成をめざしていく、また、これからの授業研究等を通して「板橋メソッド」を提案したいと発言がありました。

パネルディスカッションのまとめとして、新井からは、板橋区立の学校には1800人の先生がいて、一人ひとりが「教科書を使い倒す授業」を改めて考えることが大切。教科書をもう一度読み直してみてほしい。ここを試験に出す、ここがポイントと思わずに、まずは教科書を読むことを第一歩としてやってみてほしいとアドバイスを行いました。

 

 

今回の中間報告会では、板橋区が新しく作成した板橋のiカリキュラムのパンフレットが配布されました。当パンフレットでは、読み解く力の育成のために、どのように授業改善を行えばよいのかが分かりやすくまとめられています。これをベースに板橋区で読み解く力の育成がさらに進むことが期待されます。(RST事務局)