2022年7月の記事一覧

島根県立横田高等学校で講演を行いました

6月27日(月)に島根県立横田高等学校において、当研究所上席研究員の目黒朋子が「AI時代に求められるリーディングスキルとは」と題した講演を行いました。
横田高校では、学校全体で読解力の向上のための体制づくりを行い、すべての教科でRSTの結果分析に基づいた学習指導を行っていくという計画のもと、昨年度は1・2年生が、今年度は全学年の生徒と先生方がRSTを受検しました。

 講演では、まずAIの特徴やRST開発の経緯をお話し、AI・DX時代になぜ読解力が求められるのかを昨年度の数学の共通テストを示しながら説明しました。また受検結果の分析方法を紹介するとともに同校の生徒の結果について、具体的にデータをグラフに表し解説しました。特に、分散が大きい分野については、日々の授業の中で読解力を育成する観点を入れて授業を行い、分散を小さくし平均を挙げていくことが大切だとお伝えしました。

 次に、教員が「解像度高く教科書を読む」ということはどういうことなのか、実際の教科書の文章を提示して、RSTの6分野7項目のどのスキルを使って読めばよいのかをお伝えしました。また、教科書は教科による独特な表現もあり、生徒によってそれが読解を困難にしている可能性があります。特に、高校の場合には、先生方の専門性が高くなるため、他教科の教科書を読むことは少なく、生徒の困難さを理解できない可能性があることもお伝えしました。

 最後に、板橋区教育委員会や福島県教育委員会で実践されている、授業実践事例について紹介し、授業をRSの視点で構築していく具体的なイメージを持っていただきました。そして、生徒の実態に寄り添いながら、「間違えた」→「なぜ間違えた?」→「こうすれば間違えない」の流れをスキルとして身に付けさせ、その指導を積み重ねていくことが、頑健な汎用的読解力の育成のためには重要であることをお伝えしました。

 早速、先生方は職員室に来室する生徒への言葉掛けを話題にして、「意味が一意になっているか。」、「生徒に最後まで言葉を言わせているか。」など、まずは教員が言葉に敏感になる必要性があると話し合っているとのことです。

 

 

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F-labo 6月例会を開催しました(rst-laboふくしま)

6月26日(日)にrst-labo ふくしま(通称:F-labo)の6月例会が郡山市安積総合学習センターで開催されました。

F-Laboでは、福島県内の小学校から大学まで多くの先生方がリーディングスキルについて自発的に学び合いを行っています。現在はコロナ禍のため、オンラインによる配信も行っており、県外から参加してくださる先生方も増加しています。

 今回のF-laboでは、RSTへの取組について、3つの教育委員会から発表がありました。

 最初に、塙町教育委員会の有馬光一指導主事から、「リーディングスキルに関する塙町の取組」と題してお話をいただきました。塙町でリーディングスキルに関する取組が始まったのは、秦(しんの)教育長が令和元年の全国町村教育長会議で当研究所所長・新井紀子の講演を聞いたことがきっかけだったとのことです。
その後3年間、すべての小学校・中学校でRSTを受検し、その分析に基づく学習指導を行っています。町全体が一枚岩となって取り組んでいることにより、徐々に成果も上がってきており、全国学力学習調査やRSTの結果にも表れてきているとのことでした。また、RSTを受検したメリットとして、

 ・エビデンスデータを全学年持ち、共有できる。

 ・全教科、全教科書でRSを意識した取組ができる。

 ・授業改善に取り組んでいく際、教科の壁を越えてRSの視点で話し合うことができる。

などを挙げられ、塙町では今後も各園、各小・中学校の教職員が一丸となって子どもたちのリーディングスキル育成に取り組んでいきたいとのことでした。

次に、西会津町教育委員会の五十嵐正彦学校教育アドバイザーから、「西会津町における読解力(RS)向上の取組」と題してお話をいただきました。
五十嵐先生は、西会津中学校の校長時代から4年にわたり読解力向上に関わっており、試行錯誤を繰り返しながら以下の3点を中心に読解力向上に向けて取り組んできたとのことでした。

 1 「RS」を意識した授業の実践 

  ・全教科でRSを意識した授業を実践する。

  ・各教科の年間指導計画にRSを明記する。

 2 「認知機能」を育てる「朝トレタイム」の実施

  ・ゴグトレ(覚える・数える・写す・見つける・想像するための認知機能を強化するトレーニング)を朝の5分間で実施。

 3 「熟読」を核とした「読書活動」の実践

  ・「ビブリオバトル大会」の実施⇒令和3年福島県大会で優勝

授業では、本来授業のねらいを達成することが第一の目的です。そのため、ねらいを達成しつつRSも向上するのが理想です。3年間実践していく中で、「RSを意識した授業を行うことで生徒の理解が深まって」さらに「そのような授業の積み重ねによりRSも身についている」ことを実感しているとのことでした。令和3年度からは、中学校だけではなく、保・小・中を通した読解力育成に取り組んでいるそうです。

 最後に、相馬市教育委員会の青田雅子指導主事から、「令和4年度 相馬市の取組について」と題してお話をいただきました。今年度の相馬市教育委員会の取組は以下の通りです。

 ・「相馬プラン」で今年度の取組を示す。

 ・「相馬メソッド」により、子どもたちの読解力向上と学力向上のために必要な、授業改善ポイント(8つの視点)を示す。

 ・「授業お役立ちシート」を基に、子どもたちにとって親密度の低い言葉や、つまずきやすい言い回しをデータベース化する。

 ・「RSやってみましたシート」にRSの視点を意識した実践を記入し、それをデータベース化する。

 ・RST便り「サポートRST」を昨年に引き続き発行する。(昨年度は全10号発行)

 ・担当指導主事による授業参観・指導助言を実施する。

 ・公立学校研究指導員会(各校より1名推進リーダーと、校長会代表1名、教頭会代表1名が参加)を年6回程度開催し、RSTの分析、授業実践発表、成果検討を行う。

 ・小・中学校長会議でRSTに関する情報共有を行う。

相馬市では、2020年当研究所所長の新井紀子が相馬市で講演を行ったことにより全市挙げてのRST受検が始まりました。3年目を迎える今年は、何とか結果が出せるように、一丸となって授業改善に取り組んでいくとのことでした。

 

 

 

 

 



F-laboのロゴマーク。たちあおいの花言葉:「大望」「豊かな実り」。

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