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川南町でRSノート指導、講演を行いました。

宮崎県川南町はRST導入2年目の自治体です。毎年約千人が受検をしています。宮崎大学教育学部と連携し、RSTの結果と学テなどの総合的学力との関係の調査も始めた意欲的な町です。

8月21日に、午前中は町内の5つの小学校と2つの中学校の管理職と研究主任の先生方を主な対象として、RSTの結果をどのように学力向上に活かせばよいかについて、指導助言をしました。

RSTは受検者の読みを可視化し診断するテストです。「読み」は外からは見えないので、他の人がどんな風に読んでいるのか、理解しているのか、知る術がありません。一方、達成度を測るテストやドリルは頻繁に行われるので、子どもたちの多くが、自分の読みの得手・不得手や偏りを自覚しないまま、達成度テストの点数を見て、「自分は頭が悪い」「自分は理数系は苦手」などの(誤った)自己認識を持ってしまいがちです。RSTでは、受検者の読みを可視化し、受検者の特性や発達段階に合わせたフィードバックを返却することで、「今年一年どんなことに取り組めば、もっと巧く読めるようになるのか・授業だけで十分に学ぶことができるのか」を学習者と指導者が共に認識するためのテストです。

午前中は、(相馬市で実践したような)「個別最適化」「自己調整のための」RSノートの活用についてお話ししました。川南町では既に自学ノートを取り入れているので、自学ノートの一環として、RSノートに取り組んでいくことをお勧めしました。小学5年生でまず各自が自分の読みの凸凹を意識し、調整の仕方を小学校で学び、2年かけて基本的な教科書の読みを身に付けておくと、中学校に進学して、突然成績が下がる・勉強が嫌になる、ということを避けることができるのです。

午後は、AI時代だからこそ、RSTで測る「汎用的読解力」「自学自習力」がいかに重要になるかについてお話しをしました。その中で、興味深いエピソードがありましたので、ご紹介します。

「RSTの『イメージ同定力』と総合的学力との間には、0.65以上の高い相関があることが各自治体の報告からわかっています。ですので、どの自治体も『イメージ同定力を上げたい』と仰います。『イメージ同定』の『イメージ』とは、テキスト(文章)以外の情報(非テキスト情報)のことを指します。では、教科書の中で、どんな情報がイメージに該当するでしょう

この質問に対して、「絵」という答えが出た後、なかなか手が挙がりません。ようやく「グラフ」と「表」を挙げてくれる先生がいました。

他にどんな『イメージ』があるか。みなさんもぜひ考えてみてください。答えは「続き」へ。

 

他には、こんなものが『イメージ』に該当します。

地図、年表、写真、図形、テープ図や数直線、数式、概念図(三権分立の関係など)、楽譜

いかがでしょう。「え、数式もイメージなの?」と思われるかもしれませんが、「教科書に登場する、文章以外の情報」に該当しますね。このように考えると、「イメージ同定力」が総合的学力に直結することにうなづく方が少なくないことでしょう。しかも、写真や絵が多かった小学校中学年までの教科書は、高学年になるに従って多様な『非テキスト情報」が増加します。複数の非テキスト情報を根拠にしながら、本文を読み解くことが高学年以上では求められるのです。それは子どもたちにとって大変なことです。RSTを活用して、どの子も自信をもって中学進学・高校進学できるようにしたいですね。

それには、まず教員が率先して、教科書が、テキスト情報、非テキスト情報を駆使して、総合的にどのように情報を伝えようとしているかの「仕組み」を理解することから始めましょう。

 

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新潟県燕市で講演・講評を行いました。

新潟県燕市では、令和3年度から市内全小中学校において、汎用的基礎読解力の診断のためにRSTを導入しています。

2022年11月22日に燕市教育委員会主催の「令和4年度 読解力育成プロジェクト全体研修会」が燕市立燕西小学校を会場として開催されました。まず、開催校である燕西小学校の6年生の算数において、特に「イメージ同定」を意識した授業として、「同じ形ってどんな形?~暮らしに生かす拡大図と縮図~(全 12 時間)」の仕上げに相当する発展的な授業が展開されました。市内すべての小中学校から多くの先生、教育長はじめ教育委員会の指導主事が見守る中、体育館で授業が始まりました。

燕西小学校では、毎年、小1~小6が班をつくり、遠足をします。同じ起点と終点ですが3つコースがあります。そのコースのうち「田んぼコースが一番長いらしい」ということを児童は実感(時間がかかる、疲れる)などから感じています。それが本当かどうかを地図の縮尺を用いて確認し、「どれだけの道のりの差」があるかを数値として確認するという大変意欲的な内容でした。

児童の「実感」とこれまで学んできた「縮尺」をつなげることにより、「縮尺で考えることの良さ」を実感させるという意味では、「考える力を育てる」「算数・数学の考え方の良さを実感する」という学習指導要領の目的に合致した、内容の濃い授業です。ただ、イメージ同定と推論の力はもちろんのこと、作業に集中力が求められる授業であることに注意が必要です。

1.地図上のジグザグの道を線分に区切り、コンパスで取り、直線上に移すには、コンパスの使い方の習熟が必要。

2.「どこまでは測り済みで、どれはまだ測っていないか」をチェックする注意深さが必要。

3.地図が1万9800分の1の地図だったため、「本当の長さ」を計算するには3桁以上の掛け算の能力が必要。(学習指導要領外)

3については最初から電卓またはタブレット上の電卓を使うか、2万分の1の地図を用いることで3桁どうしの掛け算を回避できるようにする工夫があるとよいでしょう。

さて、講演では「リーディングスキルに着目した授業づくり」というお話をさせていただきました。

「すべての児童(生徒)にとって、すばらしい授業」というのは存在しません。たとえば、RSTの能力値が4~5に固まっているような学校では、上記のような授業はまさに児童にとって「算数の良さ」を実感できる授業になることでしょう。一方、RSTの能力値が2.5を平均として分布しているような場合は十分な効果が得られないかもしれません。

リーディングスキルを「伸ばす授業」というのは、能力値が1の子を2に、2の子を3に、3の子を4に、4の子を5に上げ、平均を上げつつ分散を小さくする授業です。自分のクラスの子のRSTの能力値を把握した上で、「全員が手を挙げられる問題を3つ」「半数が手を挙げられる問題を2つ」「能力値が一番高い層が手を挙げられる問題を1つ」準備し、一斉授業の中で、それぞれが確実にRSを昨日より今日、今日より明日、少しずつ上がるような授業を目指すのが、(地味ではあるが)最も効果があるのではないか、というお話をしました。

※「問題」というのは、根拠をもって解決されるべき問題を意味します。(例:「軽井沢の6月の平均気温は何度ですか?」(雨温図を読む、イメージ同定)、「ゆうなさんは『土地の高いところでは、気温が低くなる』と言っています。どのグラフを見てそう言っているのでしょう?」(雨温図を読む、イメージ同定)) 「感じたこと・思ったことの表出」は上記の「問題の数」とは別でお考えください。

意欲的・発展的な授業でなくても、リーディングスキルは、工夫によって上げることができます。頑張って計画した特別な授業より、むしろ日々の「ふつうの授業」が大切です。教科書見開き2ページの本文・資料を最大限活用しましょう。文の基本構造の把握が弱い子には、本文の構造の確認を(文法的に、ではなく自然に)確認してください。DEP、ANAはできているが推論が弱い子には「〇行目に・・・と書いてあるね。なぜだろう」のように根拠を聞きましょう。その際、根拠としてまずは教科書に書いてあることを挙げられるようにしたいですね。(もちろん、児童の実感や経験とつなぐ活動も大切ですが。)そのような実践ができている学級では、「今日学習する教科書のページ」を全員が開いており、先生が質問をすると、教科書から答えを探そうとするので、どれだけ日々の実践ができているかが一目でわかります。

RSTを導入していらっしゃる他の自治体でもご参考になれば幸いです。

 

 

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