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板橋区学びのエリア「板橋のiカリキュラム開発重点校」研究授業が実施されました。

10月1日、令和2年度板橋区学びのエリア「板橋のiカリキュラム開発重点校」研究授業(第2回目)が、板橋第一中学校で行われました。教育のための科学研究所からは、新井紀子代表のほか、菅原真悟上席研究員、犬塚美輪学芸大学准教授(教育のための科学研究所客員研究員)が参加し、各科目の研究授業の参観、助言を行いました。

研究授業のひとつである中学2年生の数学は、一次関数が題材でした。関数は中学生にとって最も理解が難しい内容のひとつで、一次式と一次関数の区別がつかない生徒も少なくありません。教育指導要領が求める「数学を使うことの良さ」を実感させることもなかなか難しい単元です。

本授業では、教育のための科学研究所からの事前助言に基づき、3つの問いから始まりました。

次の文章のうち、「変化する2つの量」の関係が「一次関数」になっているものはどれかを考える問いです。

  1. ダイエットに挑戦したが、体重が増えた日もあれば減った日もあった。
  2. ひまわりの種をまいたところ、芽が出てからしばらくはなかなか成長しなかったが、その後ぐんぐん成長し、花が咲くころに成長が止まった。
  3. 冷たいペットボトル飲料をある保冷バックに入れて持ち歩いたところ、その飲料は時間がたつにつれてほぼ一定の割合で温度が上がることがわかった。

クラス全員が3が一次関数であると手を挙げました。

授業者はここで流すことなく、(1)なぜ3は一次関数だと思ったのか、(2)1と2はなぜ一次関数ではないと思ったのか、を生徒から文章で引き出していました。これは、具体例同定(理数)の活動として位置づけられました。

「3は時間に対して一定の割合で温度が上がるので一次関数になる」「1は時間に対して体重が一定の割合で増えても減ってもいないので一次関数ではない」「2は時間に対してひまわりの成長が一定でないから一次関数ではない」

ただし、2について「変化する2つの量」が何かがわからない生徒もいました。「ひまわりの高さ」が明示的に文中に書いてないので迷うようです。このように、ふつうに書かれている文章の中で、着目すべき数量が何かを取り出すこと、そして、その関係を式で表すことの良さ(=未来や過去を予測できる)を感じてほしいと思います。

次に授業者はプリントを配布しました。そこには、実際にペットボトル飲料の温度がどのように変化したかが表になっています。

20 30 40 50 60
5.2 5.8 6.4 6.9  7.6


まず、「変化量」を見ます。小数が入る2桁の引き算を4回しなければならないのですが、結構時間がかかりました。やはり小学校で3桁の計算までは苦労なくできるようになって中学校に進学しておくと、中学校の授業では概念理解に集中できますね。適度な量のドリル、そして中学入学後も一定量の四則演算ドリルは必要だということがわかります。

さて、差分は、0.6, 0.6, 0.5, 0.7になりました。平均すると「10分ごとに約0.6度上がる」と言えるというところまでは全員が納得できました。ところが、「1分(1単位)ごとにどれだけ変化するか」がなかなかわかりません。

「10分で0.6度上がる」⇔「1分で0.06度上がる」

の変換が難しいようです。これはRSTでは「同義文判定」に位置付けられる内容です。

このあと、表をグラフで表し、式にしていきます。その際、教科書に書かれている一次関数の定義を振り返ります。

一次関数とは$$y$$を$$x$$の一次式で表せる関数のことである。

$$ y=ax+b $$

$$a,b$$は定数

この定義を正確に理解するのが極めて難しいことが、RSTのこれまでの結果からわかっています。

まず、$$a,b$$は定数という但し書きを読まずに、前提なしに「$$ax+b $$」という形の式は一次式だと勘違いする生徒(学生)は東大生にも少なくありません。また、「$$y$$を$$x$$の1次式で表せる関数」を正しく読解できる生徒は少なく、その後に書いてある$$ y=ax+b $$を一次式だとほとんどの生徒が読みます。正しくは、$$a,b$$は定数のとき$$ax+b $$は一次式であり、そのような$$x$$の一次式として$$y$$を表せる、つまり$$ y=ax+b $$と表現できるとき、一次関数といいます。

このように解像度高く読まないと、数学では様々な概念を混同してしまいますので、注意が必要です。授業者には、生徒の興味関心を引くだけでなく、解像度高い読解を促すような問いかけも意識してほしいところです。

プリントで示された表には初期値、つまり最初の温度が書かれていません。20分後からの表だけです。$$x=20$$と$$x=60$$の$$y$$の値から、連立方程式で式を求めるか、変化の平均値が1分ごとに0.06度であることから$$ a=0.06 $$は得られているとし、20分後の値から一次方程式を解くことで、切片である$$b$$を求めるなど、いくつかの方法で生徒たちは、求めるべき式、

$$y=0.06x+4$$

を導出しました。一人ひとりだとなかなか難しかったので、隣どうしで話し合いを行うことで計算間違いを見つける等の手がかりを得て、式にたどり着けた生徒が多かったようです。ここでも小数のある計算、特に割り算に中学2年の段階でも課題が残っていることがわかりました。

こうして、「ペットボトルの中の飲料は、時間を$$x$$としたとき、温度yは$$ y=0.06x+4 $$という式に従って上昇する」というまとめで授業は終わりました。

ここで、新井が手を挙げて、こんな問いかけをしました。

では、1600分後には、ペットボトル飲料は沸騰しますか?

これは生徒も想定外だったようでざわつき、「そんなことにならない」と言いましたが、「だとしたら、それは特定の$$x$$の範囲においてのみ一次関数である」ということに気づいた生徒もいたようです。次回の展開が楽しみです。

 

※冒頭の「ひまわりの成長」についての文章はもう少し詳しく書いたものを、2011年に実施された日本数学会第一回大学生基本調査のプレ調査として2010年に行われた調査で「ひまわりの成長を適切に横軸と縦軸をとって、概形を表しなさい」という問題として出題しました。教員養成系大学で大変悲惨な結果になったことが思い出されます。

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授業研究会で講演を行いました(戸田市教育委員会・戸田市立笹目小学校)

9月25日(金)、戸田市立笹目小学校において、当研究所上席研究員 目黒朋子がリーディングスキル(RS)向上に向けての授業研究会で講演を行いました。

5年生の社会科の授業「水産業のさかんな地域」ではリーディングスキルテスト(RST)の6つの視点の一つである係り受け解析を軸とした研究授業が行われました。

研究授業終了後の授業研究会では目黒からRST-laboふくしまで発表した実践を中心に、授業づくりのポイントを紹介しました。

詳細は戸田市教育委員会のFacebookをご参照ください。

 

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板橋区学びのエリア「板橋のiカリキュラム開発重点校」研究授業が実施されました。

板橋区では、2019年度から区内全小中学校でRSTを導入し、児童・生徒の読解力を診断しながら、「読み解く力」を向上するための授業開発や全校取組み、自学自習支援手法の開発を行っています。新井紀子所長や菅原真悟主席研究員、客員研究員の学芸大学の犬塚美輪准教授らが本取組の支援を行っています。

9月9日、板橋第二小学校において、新型コロナ対策を行った上で、2020年度最初の研究授業が実施されました。今回は、2年生の算数、3年生の理科、4年生の社会、6年生の国語で研究授業が行われました。

4年生の社会科の「自然災害から人々を守る活動」は新指導要領で導入された単元です。自然災害が多い日本において、地域の関係機関や人々が様々な協力をして対処してきたことや、今後想定される災害に対して、様々な備えをしていることを学び、自らも防災・減災への意識を高めていくことが求められます。防災については教科書だけでなく、自治体が発行している防災の手引きなど参照すべき資料も多く、4年生にとっては、難易度の高い単元といえるでしょう。

本時のねらいは、特に地震に焦点を当てて、地震災害から安全なくらしを守るための様々な取組について調べ、「公助・共助・自助」の意味を理解し、調べたことを分類すう活動をとおして、様々な人が取組をしていることを知ることにあります。

授業はまず、教科書の該当箇所を全員で音読することから始まりました。

「家庭・学校・通学路で地震にそなえる

 地震では、ものが落ちて起きたり、家具などがたおれてきたりします。家具の転倒防止は家庭でできる地震対策です。電気や水道が使えないときにそなえて、防災用品のじゅんびが大切です。」(教育出版「自然災害にそなえるまちづくり」より)

めあてを共有した後に、教科書の該当箇所を読み、その文章の構造を理解することは、「読み解く力向上」のために板橋第二小学校全体で取組んでることのひとつです。そして、その朗読箇所が次の問いかけにつながっていきます。

「地震から安全なくらしを守るために、誰がどんな取組をしているのかな。教科書や資料から取組を探して、

(     )が、(                      )

という文章で書いてみよう」

指導案では、この箇所は文の構造を把握しながら読む「係り受け解析」として位置づけられました。ただ、教科書や資料の文は上記の形式で書かれているとは限りません。その場合は、教科書の内容を単に写すのではなく、上記の形式に同義であるように変換する「同義文判定」の力も試されます。

4年生は学力差が顕在化する学年です。手際よく5つも6つも探せる児童もいれば、1つも挙げられない児童もいます。冒頭で音読した箇所に2つ答えが含まれているのですが、それになかなか気づけないようです。指導者は机間巡視しながら、そういう児童に対して、まずは音読した箇所から探してみることを勧め、そこから

・家の人が(自分が) 家具の転倒防止に取組む。

・家の人が(自分が) 防災用品のじゅんびをする。

という2文をまず書けるように励まします。

さて、ここで「誰がなにをする」という形式で文章を書かせたのには理由がありました。次に指導者は、

公助:区や都などが区民・都民を災害から守る。

共助:地域で協力して災害から守る。

自助:自分で自分の身を災害から守る。

という定義を示し、児童がみつけた具体例をこの定義に沿って分類する「具体例同定」の活動を行いました。たとえば、上の2つの例はどちらも主語が「家の人」や「自分」ですから「自助」に分類されることがわかります。

「江戸川の自主防災組織が、災害に備えてくんれんをしている」は共助に、「自衛隊が救助する」「板橋区が避難所を開設する」などは公助に分類されました。

コロナ禍の中、グループで議論することができなかったことが残念でしたが、特殊な機材や準備をしなくても、教師の工夫次第で、授業が読み解く力を育む授業へと変容することを実感できた授業でした。

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板橋第二小学校では、普段から様々な仮説を立てて「読み解く力」育成に取り組んでいます。たとえば、「各学年の授業において共書きができるスピードでノートを取るには一分間に何文字書ける必要がある」ということから、学年ごとに目標字数を定めて、1分視写の時間を毎週設けています。指導者が板書をするのと同じ時間でノートが取れれば、すべての児童が、探したり考えたり、考えを文章にまとめたりする時間に充てることができるからです。この取組みを通じて、1年生は6月の新学期時に比べて9月には平均して2倍の量の字数を書けるようになりました。

授業後の研究会では「授業に苦痛なくついていくことができる程度にノートを取れるようになるため」に視写をするのだから、視写という手段が目的化しないよう、個々の進度を見ながら、視写力がついた児童から高度な課題に取組ませたいという意見が出ました。また、社会科の教員からは「児童はどうしても自助ばかりに目がいくようだ。公助と共助を理解させることが単元の目標としては重要。次の時間では公助と共助を強調して定着させてはどうか」との意見もありました。

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板橋区学びのエリア「板橋のiカリキュラム開発重点校」研究授業が実施されました。

東京都板橋区では、令和元年から全区立小中学校で、すべての小学6年生から中学3年生、加えて教員もリーディングスキルテストを受検し、9年一貫の「読み解く力」の育成を通じて、学力向上・教員の指導力向上に取り組んでいます。特に、多様なバックグラウンドを持つ生徒が近年増加傾向にあることから、「言えばわかる」「読めばわかる」「やればできる」という前提を一度外し、リーディングスキルテストの6分野7項目の観点を意識的に授業に取り入れながら、生徒が確実に活用可能な形で知識やスキルを身に着けられるようなカリキュラムや授業案の開発を行っています。

今日は、板橋第六小学校で、小学1年生の算数、小学3年生の理科、小学4年生の理科、小学5年生の社会科で、「読み解く力」を育成する研究授業が行われました。

小学4年生の理科では、高橋三紀也教諭による「物のあたたまり方」(全10時間)のうち、7時間目にあたる、ビーカーに入っている水をアルコールランプで温めたときの水の動きについて、実験を通して調べたこと(6時間目)を図や言葉を使ってまとめる活動が行われました。

前回の授業では、「サーモイクラ」(サーモインクで色付けをした人工イクラ)を用いて、水を温めたときに起こる対流の様子を実験で確認しました。その実験のビデオをタブレットで再生しながら、その変化を4つの特徴的な箇所を選んで、児童に文章と図で説明させます。児童は班で議論しながらも、各自自分のノートにまとめていきます。サーモイクラの色の変化(ブルーからピンクへ)とその分布、動き(上下運動から全体的に回る様子)、に注目ができているか、注目したことを正確に言語化できるか等が評価のポイントになります。

図1:児童の書いた実験の図・説明の例

 

4行以内にサーモイクラの色の変化と動きを的確にまとめようとすると、「なりながら」「~したら」「~したり、~したりした」「全体的に」「時計回りに」などの言葉を使う必要に迫られます。「見たことを短文で正確に表現する」ことは、自由に表現することと並んで、学びを豊かにする上での大切な活動です。図にする際には、矢印を使うことが推奨されました。この箇所を高橋教諭はRSの「イメージ同定」の活動として位置付けていました。

最後に、実験でわかった「水の温まり方」を教科書のまとめを参考にして、一文にまとめる、という活動が行われました。

教科書には次のように書いてあります。

  • あたためられた水は、上に動きます。
  • 水は、動きながら全体があたたまっていきます。

この二文を、意味を変えずに一文にまとめる活動が行われました。この活動を高橋教諭は「同義文判定」として位置づけました。二文を一文にまとめるには、主語を揃える必要があります。そこで、児童は、二文に共通する「水」を主語として、たとえば、次のようにまとめていきました。

  • 水は、あたためられると上に動き、やがて動きながら全体があたたまっていきます。

理科の実験や観察では、時系列で起こることを的確に表現することが重要です。「はじめに」「じょじょに」「次に」「やがて」「さいごは」などの言葉を使いながら、ほとんどの児童が自力でまとめることができました。

 

板橋第六小学校では、普段から、週に一回、朝の時間に全校生徒が三分間「視写」(見ながら写す)に取り組んでいるそうです。視写そのものが目的ではありません。授業中に字や文を書くことへの抵抗感が減るように、との配慮から始まった取り組みです。その結果、板橋第六小学校の四年生では、マス内に字を書けない生徒や筆圧が足りない生徒はほとんどいません。授業中は、「見た通りに表現をする」ことに全員が集中しており、次々に個性豊かな表現が生まれていたことが印象的でした。

 図2:別の児童が書いた実験の図・説明

 

 

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板橋区学びのエリア「板橋のiカリキュラム開発重点校」研究授業が実施されました。

東京都板橋区では、令和元年から全区立小中学校で、すべての小学6年生から中学3年生、加えて教員もリーディングスキルテストを受検し、9年一貫の「読み解く力」の育成を通じて、学力向上・教員の指導力向上に取り組んでいます。特に、多様なバックグラウンドを持つ生徒が近年増加傾向にあることから、「言えばわかる」「読めばわかる」「やればできる」という前提を一度外し、リーディングスキルテストの6分野7項目の観点を意識的に授業に取り入れながら、生徒が確実に活用可能な形で知識やスキルを身に着けられるようなカリキュラムや授業案の開発を行っています。

今日は、板橋第六小学校で、小学1年生の算数、小学3年生の理科、小学4年生の理科、小学5年生の社会科で、「読み解く力」を育成する研究授業が行われました。

小学校1年生の算数では、飯田泉教諭による「ずをつかってかんがえよう」の授業がありました。小学1年生では、「1つ、2人」のような基数以外にも「3番目、5回目」のように順序数としての数を学びます。日常生活の中で、よく使う概念にもかかわらず、算数では非常につまずきやすい箇所として知られています。本単元の目標は「順序数や異種の数量を含む加減の場面、求大や求小の場面についても加減計算が適用できることを理解し、それを用いることができる」ことです。今回は全体で6時間の授業のうちの5時間目の授業が研究授業として公開されました。

飯田教諭は、次の2つの文章が同じ意味か、生徒一人一人に問いかけました。「同義文判定」の活動として位置づけたそうです。

多くの学校では、この文章題を深く読み解く前に、おはじきや図を使って、直感的に違いを理解するように促します。しかし、今回の授業では、「4ばんめ」と「まえに4人」という言葉の違いを意識させて、同義か異義かを一度判断させた上で、図をかかせる活動に入りました。図を使って考えた上で、改めて2つの文章が同義か異義かを確認しました。

これについて、飯田教諭は、「おはじきを使う、このような順で図を書こう、という段階を踏むと、授業中はわかった気持ちになる児童が多い。けれども、一人で問題に向き合わせると、どちらの問題にも4+3=7と答えてしまう児童が少なくない。言葉の違いをしっかりととらえた上で、図を書くという手続きを踏むことで、単元の目標である『図をつかって考える』が達成できるように工夫した」と語っていました。

そもそも文章題の文章が読み解けないことから算数につまずく児童が少なくありません。こうした小さな努力の積み重ねで、文章題の文を正確に読み解き、正しく図に変換し(イメージ同定)、そこからスムーズに解くことができると良いですね。1年生からの「読み解く」トレーニングの重要さを実感した授業でした。

 

板橋第六小学校では、週に一回、全校で朝の時間に3分間の視写の時間を取り入れています。各学年で、3分間で正確に写すことができる文字数の目標があり、ノートに書いて提出したものを担任の先生がチェックしています。小学1年生では、①鉛筆を正しくもつ、②筆圧をかけて書く、③字の形を正確に写す、④マスの中におさまるように書く、など、鉛筆とノートを使って、文章を書く上での基本を身に着けていきます。鏡文字を書いたり、促音や拗音でつまずく1年生は少なくありません。日常的に視写をし、訂正することで、2年生への進級がスムーズになることを期待します。

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研究授業が開催されました(板橋区立板橋第六小学校)

1月22日(水)に板橋区立板橋第六小学校において、学びのエリア「板橋iカリキュラム開発重点校」研究授業が開催され、当研究所代表理事・所長の新井紀子が助言・指導を行いました。

 学びのエリア「板橋iカリキュラム開発重点校」研究授業は、今年度すでに3回開催され、今回が4回目となります。

 今回の研究授業は、下記の4つの教科・単元で行われました。

 1年算数「ずをつかってかんがえよう」

3年理科「じしゃくにつけよう」

4年理科「物のあたたまりかた」

5年社会「社会を変える情報」

 
授業後の研究分科会では、授業者自評・研究協議・指導講評が行われました。

新井は4年理科の講評を行い、それ以外の研究授業については、板橋区「読み解く力」開発推進委員の先生方が指導・助言を行いました。


そのあと、体育館に移動し研究全体会が開催されました。全体会では、板橋第六小学校での取り組みや各分科会からの報告の後、新井から全体講評を行いました。

新井からは、授業についての講評のほかに、読み解く力を育成する授業はリーディングスキルテストの点数を高めるためにやるのではなく、授業・単元にはそれぞれ達成すべき目的があり、そこがないがしろになってしまうのは本末転倒であると助言がありました。

 

今回の研究授業にはおよそ200名が参加しました。区内の先生方だけでなく、国立教育政策研究所や他県の教育委員会からも参加があり、リーディングスキルに関する関心の広がりが感じられました。(RST事務局)

 

 

 

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西会津町立西会津中学校で公開授業研究会が行われました

11月22日(金)に、福島県西会津町立西会津中学校(校長:五十嵐正彦先生)において、公開授業研究会が開催されました。

この研究会は、ふくしま「実践データ活用」学習指導重点事業の一環として、研究主題「読解力の向上を目指した授業のあり方〜リーディングスキルテストの活用と結果の分析を通して〜」として実施されたものです。

公開授業では、保健体育、英語、社会の3教科で、それぞれリーディングスキルを育むことを盛り込んだ研究授業が実施され、その後の分科会では、参加した教育委員会、各校の先生方を交えた研究討議が行われました。

全体会では、リーディングスキルテストの実施から見えてきた課題と、それを踏まえた当校の取り組みについて研究主任の先生から報告がありました。

最後に、当研究所研究員の目黒朋子と菅原真悟から、リーディングスキルテストの結果に基づいた授業改善に取り組むことが重要であるとコメントしました。

西会津中学校では、リーディングスキルテストによって子どもたちの課題を明確にしたうえで、授業改善にとりくむ実践が根付いてきているようです。

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研究授業を行いました(戸田市立戸田中学校)

 

6月20日(木)、埼玉県戸田市立戸田中学校で基礎的な読解力を高めるための研究授業が実施され、当研究所代表理事・所長の新井紀子がゲスト講師として中学3年生を対象に授業を行いました。 

今回の研究授業は、中学3年生の国語の時間を用いながら理科の授業内容ともリンクする教科横断型の授業です。当授業は、6月11日に板橋区の校内研究会で本研究所研究員の菅原が提示した新井の授業案を、新井自らが実践した形となります。

 今回は、リーディングスキルの「推論(既存の知識と新しく得られた知識から、論理的に判断する)」と「同義文判定(与えられた二文が同義かどうかを正しく判定する)」の2つの能力を育てることを念頭にしています。

 戸田市で採用している中学3年国語教科書(光村図書『国語』)の「月の起源を探る」を教材に、理科教科書(大日本図書『新版 理科の世界3』)を使って太陽系の起源などの知識を確認しながら、批評的読解をするとはどのようなことなのかを学ぶことが目標になっています。

 まず授業では、「月の起源を探る」を読み解くために必要な知識を理科教科書で確認したうえで、万有引力や遠心力について実験を通して理解できるように組み立てました。
それをふまえて、「月の起源を探る」で紹介されている月の起源についての4つの仮設、(1)分裂説、(2)共成長説、(3)捕獲説、(4)巨大衝突説について、教科書に書かれていることをひとつひとつ検証していきました。

 

授業後の協議会では、戸田中学校のRS部会の先生方と戸田市の戸ヶ﨑教育長と新井指導主事も参加されて、どのように子どもたちの読解力高める授業を行えるのか、教科横断型の授業を実施するためにはどのようにカリキュラムマネジメントを行っていったらよいのか、など熱い議論が行われました。

 

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管理職を対象に講演を行いました(板橋区教育委員会)

 

4月4日(木)に板橋区教育委員会で開催された「平成31年度『読み解く力』説明会」において、本研究所所長・代表理事の新井紀子が「『読み解く力』を支える基礎的読解力の育成について」と題して講演を行いました。

1月30日の第3回区長記者会見で発表されたように、板橋区は2019年度から3年計画で全区立小中学校(74校)にリーディングスキルテストを導入し、本テストの実施を通じて子どもたちに必要とされる「読み解く力」の育成に力を入れ、子どもたち一人ひとりの学力定着・向上をめざしています。

「平成30年度第3回区長記者会見」開催(平成31年1月30日)

新井の講演では、最近のAI(人工知能)研究から明らかになった人間とAIの違いをお話し、AI時代を子どもたちが生きぬくためには基礎的読解力を育むことが重要であることをお伝えしました。

子どもたちが自学自習できるようになるためには、RSTの「同義文判定」と「推論」が必須の能力になります。「同義文判定」ができないと、記述式のテストの採点が一人ではできず、先生の模範解答と一言一句同じにならないといけないと思い、すべて書き直してしまいます。また、「推論」ができないと、学んだ事柄をつなぎ合わせて新しい知識を獲得することができず、すべてを暗記していくしかありません。

ただ、RSTはあくまでも診断を目的として開発したテストなので、RSTの結果を良くすることをめざすのではなく、子どもたちが教科書をひとりで読んで意味を理解できることを目指してほしい。それが、公教育の最重要課題であると強調しました。

今回の「『読み解く力』説明会」には、年度初頭にも関わらず全区立小中学校の管理職(校長・副校長)およそ150名の参加がありました。

今回の講演にさきがけ、教育委員会から参加される先生方には事前課題が課されていました。その課題の内容は、「読み解く力」に関して子どもたちがどのような誤読をしているのか、文の理解ができているのか、などの状況について具体例をあげて回答するものでした。

講演のあとのワークショップでは、今回の講演内容をふまえて「学びのエリア」(板橋区では、小中学校の連携を密にするため区立小学校を区立中学校単位に分けて、「学びのエリア」と呼んでいます)の先生方で集まり、持ち寄った事前課題をもとに子どもたちの状況についての報告しあい、小学校6年生までにどのような準備をさせてから中学校に来てほしいのかを協議しました。

ワークショップの後、ある校長先生が、子どもたちの基礎的読解力を育成する必要性について校内で「危機感」を共有していきたいとおしゃっていました。時間は限れていましたが、管理職の先生方の間で基礎的読解力の重要性と子どもたちがおかれている状況についての問題意識を共有していただけたと思っています。

 

 

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研究授業に参加しました(板橋区立板橋第七小学校)

2月18日(月)、板橋区立板橋第七小学校において基礎的な読解力を高めるための研究授業が実施され、当研究所代表理事・所長の新井紀子と研究員の菅原真悟が助言・指導を行いました。

 今回の研究授業は、小学校6年生理科の「電気と私たちのくらし」の単元で行われました。本時の授業のねらいは、電気を蓄えたコンデンサーを豆電球や発光ダイオードにつないで、どちらが長く明かりがついているかを比較することで、発光ダイオードの方が効率的に電気を使っていることに気づくことです。

本時の実験は、黒板に書かれた手順に従って進めていきます。まず手回し発電機を50回まわしてコンデンサーに電気をためます。その後、電気をためたコンデンサーを発光ダイオードと豆電球にそれぞれ接続し、電気がついている時間を調べます。実験の結果を自分なりの言葉でまとめて、そのあとグループで実験から分かったことを話し合います。

 

黒板に書かれた実験手順を読み、どのように実験を進めたらよいかをイメージしながら、手順どおりに実験を行うことは、「イメージ同定」の力の育成につながります。また、これまでの学習内容と本時の実験結果をもとに、どのようなことがいえるかを考えることは「推論」する力を育成することにもなります。

 

このように、発電機やコンデンサーを使った理科の授業は、昔から行われてきた授業ではありますが、けっして古いものではなく、子どもたちがAI時代を生きていくうえで必須となる基礎的読解力を育む授業にすることが出来るといえるでしょう。

 

研究授業のあとの協議会では「今日の授業がどうだったか」という議論が中心になりましたが、新井からは、まず最初に「今日の授業が成り立つ環境づくりができていることが素晴らしい」とコメントしました。

今回の実践校の特色として、さまざまな場面を活用しながら、書くことの指導に力をいれていることがあげられます。その一例として、6年生の児童は、日頃から子ども新聞の記事を100字にまとめ、さらに100字で自分の意見を書くという宿題を行っています。宿題は担任がきちんと確認し、丸付けをして児童に戻すことで、子どもたちのやる気につながっているようです。こうした地道な指導があることで、板書を写すことや、実験結果を文章にまとめることがしっかりでき、今回の授業が成り立つ土台になっていました。

次に、RSTはあくまでも診断をすることを目的に作ったテストなので、RSTに出てくるような問題を解くことを授業でしなければいけないとは考えないでほしいと助言しました。授業において、言語情報と非言語情報を全員が正確につなぐことができているかを、先生方が気をつけて確認することが出来ていれば、それは「イメージ同定」の授業であり、言葉の定義を確認し強調する場面があれば、それは「具体例同定」の授業といえます。

協議会の後、先生方からは「授業をがらっと変えなければいけないのではなく、ちょっとした「意識」を持てばよいとわかってすごく安心した」「良かれと思って作ったプリントの穴埋め教材が、書く力をかえって低下させているのではないかと反省した」などの意見が多く出ました。

板橋区での基礎的な読解力を高めるための研究授業は、今年度は今回が最後となります。研究授業を何度も行う中で、先生方の間に子どもたちの読解力を育成することをひとつの柱として、授業を改善しようという意識が定着してきたように感じられました。

なお、板橋区では、来年度以降も同様の研究授業を行っていく予定です。

 

 

 

 

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